ロバート・E・パーク『人の移住とマージナルマン』翻訳1

ロバート・E・パーク『人の移住とマージナルマン(HUMAN MIGRATION AND THE MARGINAL MAN)』の翻訳です。

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ロバート・E・パーク『人の移住とマージナルマン』翻訳1

移住は、人や文化の衝突、対立、融合を伴うため、歴史に影響を与える決定的な力のひとつとされてきた。文化の進歩はすべて、人々の移住と活動の新しい時代とともに始まると言われてきた。

現在の傾向を見ると、個人の移動は増加しているが、人々の移住は相対的に減少している。しかし、移住と移動がもたらす結果は、全体的に見ると、同じであるように思われる。

どちらの場合でも、「慣習の固い殻」は壊される。そして、個人は新しい企業や組織に向けて自由になる。

移住がもたらす重要な影響のひとつは、混血であるかどうかに関わらず、1人の個人が 2 つの違う文化の中で生きようと努力する状況が創り出されることだ。

これにより、ある不安定な性格が生み出される。これはすなわち、ある特徴的な行動様式を持った性格タイプのことだ。

これが「マージナル・マン 」である。マージナル・マンの心の中では、相反する文化が出会い、融合する。

したがって、マージナル・マンの心の中では、文明化の過程が目に見えて進行している。文明化の過程を研究するには、マージナル・マンの心の中を見るのがベストだろう。

偉大な社会を研究する学生たちは、人類を歴史という長い視野の中で見る。そのため、人種や人々の間に存在する文化的差異を、何か単一の支配的な原因や条件によって説明しようとする傾向がある。

モンテスキューに代表される学派は、その説明を気候と物理的環境に見出した。『諸人種の不平等に関する試論』の著者、アーサー・ド・ゴビノーに代表される別の学派は、文化の違いの原因を、人種が生物学的に受け継いできた生来の資質によるものだと説明してきた。

これら 2 つの理論には共通点がある。すなわち、文明と社会のどちらも、新しい遺伝的特性を獲得することによって進化すると考える点だ。人間同士の間で新しい関係が生まれることで進化するとは考えない。

これら両者とは対照的に、フレデリック・テガートは最近、イギリスのヒュームやフランスのテュルゴーまでさかのぼる、いわゆる文明のカタストロフィー理論を再述し、さらに詳しく説明した。

この観点からすると、気候や生得的な人種的特徴は、人種の進化において重要であったかもしれないが、現存する文化の違いを生み出す上では、ほんのわずかな影響力しか持っていない。

実際のところ、人種と文化は、まったく同じであるどころか、似たような条件や力によって生み出されるものでもなく、むしろ、対比効果として、対立する傾向によって生み出されるものかもしれない。そのため、文明は、人種の違いによって保護されるというよりも、むしろそれらの違いによって繁栄すると言えるだろう。

いずれにせよ、人種が孤立と近親交配の産物であるというのが真実であるならば、その一方で、文明が接触とコミュニケーションによって生み出されるものであることも同様に確かである。

人類の歴史に決定的な影響を与えてきたものは、人々を有益な競争、対立、協力へと結びつけてきた力である。

これらの影響の中で最も重要なものの一つは、私が「進歩のカタストロフィー理論」と呼んでいるものだ。それは、移住と、それによって引き起こされた人々や文化の偶発的な衝突、対立、融合である。

「文化のあらゆる進歩は、いわば新たな放浪の時代から始まる」とカール・ブッチャーは著書『産業の進化』の中で述べている。

そしてこの理論を支持するために、彼は初期の交易形態が移動型であったこと、また、家庭内で行われていた仕事で最初に産業化した職業は、あちこちに巡回する形で行われていたことを指摘している。

「宗教の偉大な創始者、初期の詩人や哲学者、過去の時代の音楽家や俳優はみんな、偉大な放浪者だ。今日でも、情報伝達手段が大幅に発展したにもかかわらず、発明家や新しい教義の説教師、そして名演奏家は支持者や崇拝者を求めて各地を旅しているのではないだろうか?」

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