ロバート・E・パーク『人の移住とマージナルマン』翻訳2

ロバート・E・パーク『人の移住とマージナルマン(HUMAN MIGRATION AND THE MARGINAL MAN)』の翻訳です。

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ロバート・E・パーク『人の移住とマージナルマン』翻訳2

移住の影響は、もちろん、既存の文化に及ぼす変化だけではない。長い目で見ると、移住は歴史的な民族の人種的特徴を決定してきた。

「民族学の全ての教えは、混血の人々のほうがむしろ普通であることを示している」とグリフィス・テイラーは述べている。

調べてみると、すべての国は、多かれ少なかれ成功した(人種の)るつぼ(入れ物)であったことがわかる。

人文地理学者は、人種や民族の絶え間ないふるい分けを「歴史的運動」と呼んでいる。

なぜなら、センプル氏が『地理的環境の影響』の中で述べているように、「それはほとんどの歴史記述の根底にあり、書かれていない歴史、特に未開の部族や遊牧民の歴史の大部分を構成している」からだ。

確かに、人種の変化は、ある程度は文化における変化の結果として生じる。

人々の移動や混ざり合いは、急速で突然の、そしてしばしば破滅的な変化を風習や習慣にもたらす。時間の経過とともに、混血の結果として、気質や体格にも変化が起こる。

おそらく、人種が共通の経済によって強いられる密接な接触の中で共存し、人種同士の接近がある場合、人種的な混血が起らなかった例はいままでひとつもなかっただろう。

しかし、人種的特徴と文化的特徴の変化は、非常に異なる速度で進行し、文化の変化が生物学的に合併して伝わるということはない。あるいは、伝わるとしてもごくわずかであることが知られている。獲得形質は生物学的に遺伝しない。

進歩の手段としての移住の重要性を強調する著述家は、必ず戦争にも同様の役割があると考える。

実際、ヴァイツ(テオドール・ヴァイツ)は、文明の媒介としての移住の役割についてコメントし、移住が「最初は平和的な性質を持つことはめったにない」と指摘している。

戦争について彼はこう言っている。「戦争の第一の結果は、人々の間に固定された関係が確立され、友好的な交流が可能になることである。その交流は、単なる商品の交換よりも、知識や経験の交換のほうがより重要なものになる。」

そして彼はこう付け加えている。「どんな文明水準の人々であっても、他の人々と接触したり相互に行動したりせずに暮らしていると、一般的にある種の停滞、精神的無気力、活動性の欠如が見られ、それが社会や政治状況のいかなる変化もほぼ不可能にしてしまう。」

これらは平和な時代には永遠に続く病気のように伝染する。平和主義者たちが何を言おうと、戦争は国民精神をふるい立たせ、硬直した現実を破壊する救いの天使のように見える。

平和的であろうと敵対的であろうと、ある民族が他の民族の領域に侵入するという観点から歴史過程をとらえる著述家には、グンプロヴィチやオッペンハイムのような社会学者も含めなければならない。

グンプロヴィチは、社会過程を抽象的に定義する試みの中で、それを異質な民族集団の相互作用として記述し、その結果生じる人種の従属と優位が、事実上、社会秩序、社会を構成するとしている。

同じように、オッペンハイムは、国家の社会学的起源に関する研究で、国家の歴史的起源は、そのすべてにおいて、遊牧民による定住農耕民族の征服であったと考えている。

いずれにせよ、オッペンハイムが自身の論文を裏付けるために収集した事実は、社会制度が実際には、少なくとも多くの場合、進化的選択のプロセスや比較的わずかな変化の漸進的な蓄積ではなく、突然変異によって突然に誕生したことを示している。

文明の進化における破滅的な変化の重要性を主張する理論が、同時に革命を進歩の要因として考慮に入れるべきではない理由は、すぐに明らかになるものではない。

ヴァイツは、平和と停滞が社会病の形をとる傾向があると示唆する。サムナーは、この停滞を打破し、既存の社会秩序の中に閉じ込められた個人のエネルギーを解放するためには、「社会には何らかの活性化が必要である」と言っている。

そうであるならば、中世の十字軍のような「冒険的な愚行」や、フランス革命で表現されたようなロマン主義的な熱狂が、あるいは、ロシアにおける最近のボルシェビキの冒険が、既存の習慣のルーチンを中断し、慣習を破壊するのに、移住や戦争と同じくらい効果的に機能するかもしれない。

革命の教義は、その性質上、進化による変化ではなく、むしろ破滅による変化の発想に基づいている。

ソレルの『暴力論』で考え出され、合理化された革命戦略は、大災害を引き起こし、ゼネストを行うことを教義とする。

それ自体では、革命的大衆の士気を保ち、規律を高める手段となる。

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